ストロボを使って人物撮影にチャレンジ!【夜景編】


 前回まで2回にわたり、室内で人物をストロボ撮影する際の注意事項やテクニックを解説しました。そこで今度は、これから暖かくなるにつれて挑戦する機会が増えてくる夜景撮影について、きれいに撮るための方法を考えてみましょう。


夜景の撮影は、プログラムモードではうまくいかない

 今回は、美しくライトアップされた洋館を背景に、人物を手前に入れて撮影してみました。デジタル一眼レフをP(プログラム)モードにし、内蔵ストロボを発光させて撮ったところ、人物の明るさは適正なのに背景の洋館は暗くなってしまいました。

▼プログラムモードでは、夜景をきれいに写すのは難しい
ライトアップされた洋館の前で、P(プログラム)モードを使って夜景と人物を撮影。感度をISO400相当に上げての撮影だが、背景はかなり暗くて建物の形状すらわからない。この時のシャッター速度は1/60秒で、絞りはF4だった

 これは何が問題なのかというと、ストロボの到達距離にあります。あくまで目測ですが、この状態でカメラと人物の距離は約2m、カメラと洋館の距離は10mほど離れています。デジタルカメラの内蔵ストロボは到達距離が5〜6m前後しかないので、背景の洋館にはストロボの光が届かなかったと考えられます。

 ならば、到達距離の長い大光量の外部ストロボを付ければ解決するかといえば、実はそういうわけにはいきません。「ストロボで何かを照らす際の明るさは、ストロボと被写体との距離の2乗に反比例する」という法則があります。これで考えると、2mの距離にある人物は、10m先の洋館に比べて25倍も明るく照らされる計算になります。つまり、洋館が適正の明るさに照らし出せたとすると、人物はその25倍もの明るさで照らされるためにまっ白になり、表情は見えなくなってしまうでしょう。

 そこで使うのが「スローシンクロ」と呼ばれるテクニックです。これは、シャッター速度をかなり遅くして撮影することで、背景の洋館をほのかなライトアップの光だけで照らしつつ、手前の人物をカメラのストロボで照らしてやる、という合わせ技です。

 この方法で撮影するには、多くのカメラが搭載しているシーンモードで「夜景ポートレート」を選ぶのが簡単です。こうすれば、背景の夜景に合わせたシャッター速度が設定され、しかもストロボの発光量は手前の人物に最適になるよう設定されます。

 気を付けたいのは、シャッター速度がかなり遅くなるだけに、手ぶれが起きやすくなること。三脚を使ったり、カメラを手すりなどに置いて撮影するよう心がけましょう。

▼雰囲気は出たが、思い切り手ぶれしてしまった…
今度は、絞り優先のスローシンクロモードに設定して撮影したところ、ライトで照らされていた建物が浮かび上がってきた! ただし、シャッター速度は1/2秒にまで下がっており、さすがに手持ち撮影では手ぶれを防ぐことは難しい
▼カメラを三脚に固定することで、美しく撮影できた!
先ほどと同じ撮影設定で、今度は三脚にカメラを据えて撮影したところ、手ぶれが発生することもなく、背景も人物もバランスよく撮影できた。夜景の撮影時には、ちょっと面倒でも三脚を携行することを忘れないようにしたい

 シーンモードを利用せずにスローシンクロを行う場合は、デジタル一眼レフカメラのメーカーにより設定方法が異なる点を覚えておきましょう。例えば、キヤノンの製品は絞り優先モードでストロボ撮影すると自動的にスローシンクロモードになるのに対し、ニコンのモデルはストロボモード切替を「SLOW」に設定する、という具合です。

 なかでも便利なのは、コニカミノルタのデジタル一眼レフカメラです。通常のストロボ撮影ではシャッター速度が速めになりますが、親指の位置にある「AEロック」ボタンを押しながら撮影すると自動的にスローシンクロモードになるのです。

 夜景と人物をスローシンクロで美しく撮影するテクニックは、花火や旅行などでも応用できるので、ぜひマスターしておきましょう。

●今回のまとめ
・いくら大型のストロボを使っても、夜景には光が届かない
・夜景を写すには、カメラをスローシャッターに設定しよう
・スローシャッターとストロボ発光を併用する「スローシンクロ」ならば、夜景も人物もきれいに撮れる
・スローシンクロ時には、必ず三脚を使って手ぶれを防ごう